2011-10-31

アール・デコの館 -the Art Deco residence-



11月から改修工事で休館となる東京都庭園美術館が、週末3日間のみ夜間オープンとライトアップをすると聞き、最終日の前夜にすべり込みで行ってまいりました。期間中は普段公開されていない客間や浴室なども見学でき、撮影もOK。ワクワクしながら、トワイライトタイムを待って美術館へ。昭和8年に朝香宮邸として建てられたこの庭園美術館、実は子供の頃から家族に連れられて数えきれないほど訪れた懐かしい場所でもありますが、夜の時間帯に来たのは初めて。宵闇の中にライトアップされた外観はドラマティックで、また違った印象を受けます。当時撮影されたフィルムを外壁に映写し、大勢の人たちが静かに鑑賞している様はとても優雅で、昔の雰囲気を思わせます。
日本のアールデコ建築を代表するこの建物の内部には、ルネ・ラリックによるガラス装飾や巨大な香水塔、「ウィンターガーデン」と呼ばれるモダンな内装の温室など、見どころが沢山。今回は夜ならでは、アールデコの象徴とも言える"光"にフォーカスして館内を見て回りました。













ガス灯から電灯へ。直線的で幾何学的なスタイル、堅固な素材と同様に、"光"すら量産できるようになったアールデコという時代は照明デザインの可能性も一気に飛躍したのだと思わずにはいられない、美しいライトの数々に時間を忘れてしまいます。
大小の客間に備えられた様々なシャンデリアやスタンドが室内全体を明るく照らし、一方で居間や寝室などに吊り下げられたペンダントライトはプライベートな空間に何とも言えない陰影を描き出していて、当時の宮様の優雅な生活を想像させてくれます。階下に降り、ふと気づくとどこからかラヴェルのパヴァーヌが流れてきます。1階客間では室内楽の演奏が始まっており、いっそう雅な雰囲気に♪




ラリックのガラス扉越しに見える、静かに談笑する人影。当時もきっと、こんな風に催しが行われ、夜が更けていったのでしょうか...(*w*)






書庫のペンダントライト。球体のデザインは他の部屋でも使われていましたが、どれもよく見るとガラス部分に細かい細工がしてあったり、つり下げている鎖に装飾が施されていたりと、ため息が出るものばかりです。ヨーロッパの建築に見られる天井のレリーフも、換気口の役割を兼ねた作りに設えてあり、当時日本最高の設計技術と言われていた職人達の細やかな仕事ぶりを感じさせます。






金平糖のようなフォルムが遊び心を感じさせる、廊下のライト。天井に色ガラスが映り込み、ステンドグラスのような効果を醸し出しています。






通風口のなんと優美なデザイン....。やはりディテールに目がいってしまうのは職業病です(笑) 
全体のスタイルとしてはアールデコがベースとなっていますが、ラリックのガラス作品に見られるようなアールヌーヴォーの優美な曲線の名残だったり、宮家にちなんだであろう植物文様のアレンジや抑制されたカラーリング、かとおもうと大胆にも2色の石材をチェッカーボードに配した石造りの温室と、時代の過渡期特有の様々なテイストが巧みに融合し、不思議と暖かみと味わいのあるアールデコ建築を創り出しているように感じました。







御影石と大理石で覆われた3階の温室には真紅のテーブルと椅子が置かれ、今見ても充分スタイリッシュ !






帰る頃には辺りは真っ暗。正面入り口のパネルが映えます。
リニューアルオープンの日程はまだ未定との事ですが、補修工事を終えてまたここに通える日を楽しみに...♪