2024-04-03

王子の桜とファッションプレート


 SNSのお知り合いから教えて頂いた企画展を観賞に王子の北区飛鳥山博物館へ。

『ファッションプレートが映し出す近代』と題されたこの展示は、日本の服飾文化史における重鎮・伊藤紀之翁が近代ヨーロッパを中心に国内外で収集したファッションプレート(ファッションスタイル画)の歴史を紐解く展示です。

古いものは1500年代のフィレンツェから17・18世紀貴族階級のドレススタイル、やがて産業革命を経て20世紀のモードの変遷を日本国内と比較しつつ一気に観賞出来る充実の内容で、展示されている資料の数やバリエーションの豊かさに圧倒されました。

これらのファッションプレートを製造する凹版印刷が実は日本の紙幣で使われる原盤彫刻の技術と同じであるというのも非常に興味深く、何より当時刊行されたモード雑誌のデザインの美しさ、洗練度にうっとりと見入ってしまいます。コレクターの情熱を間近に感じられる素晴らしい企画展でした。





許可を頂いて撮影。フラッシュ無しでのみ撮影OKとのことです。
ヨーロッパ・日本共に1900年代はファッションが大きく変遷した時代、貴重な資料が沢山あり何度も訪れたくなってしまいます。下の写真は表示のカリグラフィーが美しい『ガゼット・デュ・ボントン』当時最先端のファッション情報源だったことでしょう。













一寸珍しい洋装の男女をモチーフにした木版画。明治21年の製作だそうで、バッスルスカートのボリューミーなシルエットを浮世絵の洗練されたラインで見事に描いています。









19世紀の原画と印刷画を比較して。印刷は線がくっきりとディテールがわかりやすく、原画は水彩の淡い表現が優しい印象です。




フォトスポットもあったりと親しみやすい構成。





5月12日まで開催のこの展示、なんと無料。ファッションにご興味ある方は是非お薦めしたいですし、図録も情報量が多く有り難いです。








   春期企画展『ファッションプレートが映し出す近代』美術と技術の交差点
   北区飛鳥山博物館 特別展示室・ホワイエ







帰りに駅までの道で見かけたレトロな風景。
桜はまだ5分咲きでしたから今度は満開の時に訪れてみたいです。














2024-03-18

春色のリング

このところインスタグラムやFacebookに発信の場がうつり、こちらのBlogはすっかりご無沙汰しておりました...;;ですが、SNSをされていない方にはこちらからの発信は大事だと改めて思い直しまして、SNSと重複してしまいますがこちらにもまた写真など載せて参りたいと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。






先日お納めしたクチュールリング。
春の気配を雫に閉じ込めて指先に乗せたような、ぽってりと淡いローズクォーツとプラチナのシンプルなデザインに顧客のマダムの特別な思い出が詰められています。

リングの製作にあたってマダムから頂いたリクエストは「記憶の中の指輪」を作りたいというものでした。
若い頃に訪れたパリの街角で宝石店のウィンドウに飾られていた指輪、桜のような淡いピンクの宝石とコロンと丸いフォルムに心惹かれていつか身につけたいと思っていたところ、そのお店はなくなってしまい、憧れのリングの思い出をずっと忘れられずにいらしたとのこと。
まずはマダムの記憶を頼りに、イメージに合う色味を探していつくかの産地別に石をチェックすることから始めます。



ルースの選定風景。同じローズクオーツでもそれぞれ微妙に色合いが違います😚



ミャンマー産の透明感あるピンクも美しかったのですが、彼女が選んだのは少し淡くてミルキーなピンクが可愛らしい
ブラジル産のローズクォーツ。
かなり大きなルースのサイズを模型に合わせてリカットし、プラチナ枠はギリギリまで高さを抑えてまるで大きな水滴が指の上に乗っているような印象にお仕立ていたしました。
完成したリングを嵌めて下さったマダムが当時の気持ちを思い出したと笑顔で喜んでくださった事がとても嬉しいお仕事でした。