2019-03-09

学び週間


フランスのジュエリーメゾン ヴァンクリーフ&アーペルが創立した、ジュエリーと宝飾芸術の学校「L'ecole (レコール)」のワークショップと講義を受けてまいりました。
未来の職人やデザイナーの育成にとどまらず、ジュエリーの文化としての側面を世界に伝えてゆく他に類を見ない 教育機関のレッスンを日本に居ながら受けられる貴重な機会、かなり前からカリキュラムを組んでこの一週間を講義に充てていたのですが、スケジュールの間に急遽国内での工場視察と打ち合わせが入り、図らずも全くベクトルの違うものづくりの現場を連日体験する事になりました(*o*)



まずはレコールにて、姪が受講する子供を対象にしたクリエイティブ・ワークショップにつきそいました。レッスン前に開始を待つラウンジではドリンクや軽食がサーブされ、朝から優雅な雰囲気^^
キッズクラスといっても決して子供が喜ぶような会場演出にしているのではなく、大人の社交場に招き入れることで、小さいうちから本物のエレガンスを感じさせる、というフレンチメゾンとしての哲学が感じられます。
そして授業では様々な素材を自由に使ってジュエリー制作に取り組み、ものづくりの楽しさや自己表現を学びます。徹底して"自分はどうしたいか" を意識するスタイルは側で見ているだけでもワクワクしてしまいます** 






淡いブルーで統一されたガイドブックと教材。ワークショップの最後には、名前を入れた修了証を一人ずつに渡してくれます。展覧会のカタログも一式、ブルーのバッグに入れてプレゼントしてくれるのはさすが。
英語とフランス語、日本語が飛び交う賑やかな空間で、初めて会うお友達と助け合いながらジュエリーづくりを楽しんだ姪にとって、このレッスンが "クリエイション" の原体験になっていたらとても嬉しいなと思います^^



そして自分のクラスは宝石学とサヴォワフェール(職人の手仕事)。
宝石学では基礎的な宝石の概念を学んだ後、ジェモロジストの先生に偏光器や屈折計の使い方を教わりながら4時間で石の鑑別を進めてゆきます。
今まで感覚的に判断していたカラーストーンの印象や違和感(長年宝石を見ていると身につく経験値のようなものですね^^)を理論的に証明する方法を基礎から学べたのはとても有り難く、何より先生とのディスカッションの中で「大切なのは直感を信じる事。つまり鼻を利かせる事」と科学的判断の対極ともいえる感覚的な言葉を頂けた事に感動しました。



翌日は日帰りで工場へ。現場にお邪魔してシステムや技術を見せていただきつつ、新しいデザインを生み出す為の開発ミーティングを行います。
整然としたラボの雰囲気から一転、切削やプレスの音が響く工場内を隅々案内していただき、最新機種から年代物まであらゆる用途の機械を見たり、時に実際に動かしたり。ものづくりのコアな部分は極秘ですが、写真OKなものをいくつか載せております^^





こちらはプレス機の森。よく見るとお一人、職人さんが作業中...。




新しい機種のはずなのに、ショコラ色の塗装がレトロに見えてしまう鋳造機。マカロンみたいなフォルムも相まってカフェに置いても違和感なさそうな可愛らしさです(笑)





一日がかりの工場視察から戻り、翌日はサヴォワフェール(職人の手仕事)のレッスン。
ジュエリー製作に必要な工程の幾つかを実際に体験させてもらえます。実は私、今までに一度も実技の講習を受けた事がないのです....。グレイバーを握るのも初めて^^; ツメを起こす練習、比較的柔らかいシルバーでこの有様(>_<)








ワックス削りも初体験。先生に「なんでやったことないの〜?!」と驚愕され、ノコギリは非力すぎてブレードが微動だにせず.....せめて形だけでも、とスタッフの方が写真を撮ってくださるもやはりぎこちないですね(+_+)
ちなみに借りた白衣が大きすぎて「うん、袖がぶかぶかだね」としっかり笑いは取れていました。^^;




唯一まともに出来た磨き作業。日本の工房でも絹糸を使って磨き上げたという話は聞きますが、こちらのメゾンでは黒い子豚やヤギの毛を使っていたそうです。

大学で美術史や博物館学を専攻していたため一般的なジュエリーデザイナーのように宝飾専門学校を卒業していない私は、恥ずかしながらワックスやシルバーでの造形はおろか道具も使った事がなく、言わば基礎教育を受けずに現場で学ばせていただいた経験値だけで積み上げて来ていたのですが、知識として理解してはいたものの、シルバーを削る大変さや磨きの作業の難しさなども実感を伴って経験できたことはとても新鮮でした。
そして、短い時間の中でも様々な技術的な秘密を見せていただきながら、それらすべてが "ジュエリーを美しく見せるため" に生み出され今も継承されているということ、一世紀以上の歴史を持つハイジュエラーの奥深さに触れ、感動を覚えました。
もし機会があるなら、パリの本校もぜひ訪れてみたいです* (その前にもう少し英語を頑張らねば...笑)





おまけのスナップ♫
4時間の講義は途中休憩の時間が入ります。集中しているとかなりお腹もすいてきますので、グループになった皆さんとのおしゃべりを楽しみつつ、お茶とプティフールでエネルギー補給(*´w`*)