2020-04-29

静かな午後に

世界中の都市という都市が息をひそめ眠りについたかのような2020年の春も過ぎ、気づけば初夏を迎えようとしています。

その中にあっても、過酷な現場でたくさんの命を繋ぎ、あるいは生活や仕事に必要な物資を運び私たちの暮らしを助けてくださる方が居られることに深く感謝をしつつ、篭って過ごす日々にも学び得ることがあるはずと、慌ただしく過ごしていた生活を省みて等閑にしていた色々なことを少しずつこなしております。



先ずは限界までカオスだったアトリエの整頓。特に「床に積み上げがちな本問題」を解決するため、棚を増設しレイアウトを変えてみたり、あまり使わない資料やディスプレイを処分したり、長年使っていたPCを新しいものにデータ移行したり。(ほぼ雑務ですね;)
こうして身の周りの小さなことを整えてゆくと、普段は気づかない余剰なものや時間が少しずつ溜まっていっていたことに気づかされます。
パステル画の大きな作品を描かなくなってからは閉めきりがちだった天窓にUV加工を施し、日中はなるべく自然光で生活するようにしましたら、室内灯がなくても日没まで暗さを感じず過ごせることも思い出しました。家の中にいてもこれからは陽の高さや光の色で季節の移ろいを実感できそうです。




過去の画像データを整理していましたらちょうど5年前、4月の終わりに訪れていたイギリス アイオナ島の写真が目にとまりましたので再掲を*



“ REST AND REMEMBER ”

ー 休息せよ、そして心に留めよ ー



(特別な意味や歴史背景は別として)碑文の解釈はある程度、その時の読み手の心に委ねられると思っておりすので、今訳すとしたらこんなメッセージになるのでしょうか。



そしてもう一枚はロンドン市内、詩人アルチュール・ランボーが一時期暮らした家。




ランボーの生きた1850年代〜90年代は、産業革命や資本主義によってそれまでの社会構造や人の生活がめまぐるしく変化し始めた時期でもありました。
著作『地獄の季節』の中で彼はかつてないスピードで肥大しつづける文明に対して皮肉と警鐘を織り込んだ一節を残していますが、約130年後の現代でも考えさせられる、鋭利な切れ味のあるフレーズです。




Oh ! la science ! On a tout repris. 
Pour le corps et pour l'âme, - le viatique, - 
on a la médecine et la philosophie, 
- les remèdes de bonnes femmes 
et les chansons populaires arrangées. 

Et les divertissements des princes 
et les jeux qu'ils interdisaient ! 
Géographie, cosmographie, mécanique, chimie !...

La science, la nouvelle noblesse ! Le progrès. Le monde marche ! 
Pourquoi ne tournerait-il pas ?


- Arthur Rimbaud 『Une Saison en enfer』(1873)


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ああ、科学!皆また繰り返す。
肉体のための、魂のための、今際の際の聖餐だ。
我々には医学もあれば哲学もある、
淑女のための救済法に耳障りの良いシャンソンを。
坊ちゃん達にはほんの娯楽、それとも禁止されたゲーム。
地理学、宇宙論、力学、化学!

.....科学、新しい富裕層。 
進め、進め、世界は歩む! なぜ後戻りしないのだろう?


- アルチュール・ランボー『地獄の季節 - 悪い血より抜粋