2008-11-27

"恋に落ちる都"




 パリ滞在中にちょっとしたご縁があり、ピカソ美術館の館長 フランソワさん宅の夕食にお招き頂いたときのことです。

  帰国前にヴェネツィアに寄る私の予定を知った彼曰く「ヴェネツィアを訪れると皆、彼女と恋に落ちるんだよ」(この言い回し、さすがパリジャン)「夏は観光客しか居ないけれど、冬は地元の人が生活している気配があるから好きだな。君もきっと落ちるよ」と。
確かにほぼ10年前に訪れてから、気になる都市ベスト1。いつかもう一度と願い続け、ついに今年思いきって足をのばしてみました。フランソワさんお薦めの冬のヴェネツィア、今回は滞在時間1日半という短さです。今年は雪まで降ったパリの人達は口を揃えて「イタリアだから絶対こっちより暖かい」と言っていましたが....

CDG空港から1時間半、マルコポーロ空港へ到着し飛行機を降りた瞬間、絶句。
イタリアは軽〜く氷雨が降っていました(笑)



 船着き場で寒そうに客待ちしているドライバーさん達に荷物を積んでもらい、雪と氷の張り付いたモーターボートでラグーナへ出発。視界は一面、曇った海と空の鉛色です。低く飛び交う海鳥の大きさにもちょっとびっくり。



  空港から離れること10分程、徐々にボートの速度を上げて海面を走っていると、霧雨の向こう、灰色の海の上にうっすら街並みが見え始め、その美しさから'アドリアの女王'と呼ばれた水都ヴェネツィアが私の前に静かに姿を現してくれました。海面の上昇でやがては沈みゆくこの都市と再会した瞬間、幸福感とせつなさで胸がいっぱいに.....


どうやらフランソワさんの言葉は正しかったようです。