一昨年急逝された陶芸家、マヌエル・アンドレウさんの遺作展が行なわれている国立の暁陶房に家族でお邪魔してまいりました。
実家ギャラリーがまだ渋谷にあった頃から作品をお預かりし、私自身もその淡く優しい色とキラキラと輝く鉱石のような美しさに魅了されて、いつも新しい作品を楽しみにさせて頂いていました。
作品を受け取りにアトリエにお邪魔すると、作品のフォルムや釉薬について静かなトーンでぽつぽつと核心をついた言葉で話してくださったり、作品を包みながらこっそり鼻歌を歌っていらしたり、またアトリエの庭にある垣根の先端で近所の子供達がケガをしないよう、焼き損なったぐい飲みや茶碗を尖った先にかぶせてあげていたこと等々...穏やかで優しいマヌエルさんのエピソードは忘れられない記憶になっています。
今回アトリエを解放して展示されていた作品の殆どは、初日に並んだコレクターやファンの方達に売約済みとなっていましたが、すっかりスペースの開いた陳列棚に懐かしく優しい色合いの花器が数点、そっと佇んでいるのを見つけてしまいました。
上品な卵形のフォルムに華奢な首がのった淡い色合いの花器。一度手にとると卵を抱えているようで手放せない感覚を覚えます。こちらの作品と、鮮やかな青が印象的な花器、どちらも眺めていると色の深さや繊細さに目が離せなくなるマヌエルさんらしい作品。片方を選ぶことは出来ず、2点共にお持ち帰りさせて頂きました。
"日本の緑色"にこだわっていたという非売品の初期作品。彼の作品を多くの人に見て頂きたいからと撮影を許可して下さった奥様のご好意に甘え、写真でご紹介を。
青い結晶が美しい花器。丸いかたちをくるくる回転させていると、実に複雑な表情の移ろいがあることに気づきました。例えるなら飛行機の窓から眺める、昼から夜へと移り変わるトワイライトタイムの海の色を思い出させるような、見つめているとそのうち地球そのものを眺めているような、不思議な浮遊感。「何人もの方がこの作品を素敵だと言っていたの。でも何故か今日まで棚に残っていたのはきっと、マヌエルがたまこさんにとっておいたからだと思うわ。」と奥様の陽子さんに頂いた言葉がとても嬉しく心に残りました。
この作品、そしてこれまで少しずつコレクションしてきた彼の作品は、きっとこれからも私に美しいインスピレイションを与えてくれる気がしています。
La gratitud ilimitada, al cielo. muchas gracias Manuel-san.