2016-06-30

仮想現実までの距離はどのくらい?


台場・日本未来科学館にて昨日より開催されている音楽とテクノロジーの融合イベント『Bjork Digital』を体験してまいりました。
早くから音楽やPVに先端技術を取り入れ独特の世界観を築いてきたアーティストBjorkDentsu Lab Tokyoによる、VR(仮想現実)を取り入れてBjork作品の世界をより親密に体験するというコンセプトだそうで、最近色々な場面で目にするVR用のヘッドセット(頭に着けるモニターとヘッドフォン)も初体験。



実際に体験してみた感想はというと.....もちろん個人差はあると思いますが正直、首や目の周辺にかかるヘッドセットの閉塞感&重量に加えて室内に大勢の人達がひしめき合うことで生じる熱気、息苦しさや匂いなど、リアルな身体が受ける不快感がVRから受ける感覚を上回ってしまい、集中出来ず....(>_<)
むしろ暗くて狭い部屋に押し込められた人間達が互いに何の連携もなく360度見回せる海岸の仮想空間「ストーンミルカー」に逃避出来るかどうか、という実験体にされているような錯覚に陥り、まるで映画『マトリックス』の乾電池と化した人類の気分でした;;

もちろんCGや3Dゲームに慣れている人にとってはこうした違和感は気にならないものなのかもしれませんが、(アナログ世代だから特にでしょうか)皮膚感覚や嗅覚といったリアルな感覚器官が受ける情報と、ヴァーチャルな視覚情報とを切り離して認識はできず、モニターとの近すぎる距離も視野狭窄に陥りそうで戸惑ったり。現実の身体にかかるストレスが軽減されないとエンターテイメントとして普及させるのはなかなかにハードルが高そうです....が、将来的には人間の身体の方がVRシステムに適応してゆくのでしょうか。

とはいえBjork自身が新しい技術を使った実験の段階とコメントしていたように、現代の日本の科学はここまで進んでいる、という段階的な発表の場と捉えればこの体験も腑に落ちます。まだ完成された技術ではなく、今後の可能性を含めた指標の一つとしての、体験者も含めた"実験" だったのだなと。
また、前日の夜には幸運にもBjork本人によるデジタルメイキング・パフォーマンスにも参加できました♫ (こちらも説明が難しいのですがとても簡単に言うと、撮った映像に特殊効果を施しつつリアルタイムで流し世界の何処からでも視聴可能というなんだか凄い実験です

メイキング中は撮影禁止なので、終了後の一枚。
今回舞台装置にもなっていた地球のオブジェが大迫力です....




プレイベントとなったこのパフォーマンスは、真っ白な衣装と独特なマスクに身を包んだBjorkのリアルな歌声と、彼女の動きや声に合わせダイナミックにデザインを変える巨大な地球のオブジェに投影された光の表現が超現実的な美しさで、科学のイベントながらまるで原始的な儀式を見ているかのような神々しさとエネルギーに圧倒されました(*o*)






メイキングの後にトークセッションもあり、テクノロジーにエモーション(感情)を乗せる事でより深い繋がりを得たいと願うBjorkの制作スタンスや具体的な技術の解説、ラストは地球の未来についての質問まで、国立の科学技術機関ならではのトーク内容で充実のイベントは深夜に終了となりました。帰り道、人工都市の夜景が不思議な雰囲気です。






こちらは常設展に設置されていたニュートリノ計測装置カミオカンデの実寸大。
テクノロジーの中にも美しさが沢山潜んでいます^^


余談ですが、仕事がら来訪者の満足感や共感度という科学から少し離れた視点で今回の展示全体を見ていると、ハイブランドが開催しているテクノロジー技術を取り入れた展覧会とは全然違った発見もあったりで、その部分も興味深いリサーチポイントでした。



Bjorkのような音楽分野のみならず、ファッションやラグジュアリービジネスの業界でも近年テクノロジーの取り入れ方や向き合い方など様々な模索がされており、まさに今が過渡期という感覚を強く感じます。
体験したVRとテクノロジー、ファッション、そしてジュエリーの在り方も....諸々の要素を編み込んで、クライアント向けのリポートを執筆中です*