2013-04-25

Ciao, italian art* その3 ~ Florence ~


 (The summary of text is coming soon * )




アレッツオでの移動中、車からの風景。この日は初夏の心地よいお天気で、ちょっとしたドライブ気分です。そして途中、レオナルド・ダ・ヴィンチの『ラ・ジョコンダ』に描かれている橋ではないかと言われる"ブリアーノ橋"へ寄り道してもらいました。 橋のたもとにはこんな看板も...*






水際まで近づいて見上げるブリアーノ橋。新緑のみずみずしい空気に元気をもらえそうです。レオナルド・ダ・ヴィンチの生家をいつか訪れてみたいと思いつつ、ベースホテルのあるフィレンツェへ戻りました。着いたその日にドゥオーモ〜サンタクローチェ協会〜ダンテの家〜ヴェッキオ橋、を文字通り駆け足で巡る弾丸ナイトツアーを敢行。今回現地でアテンドしてくれたマネージャーのご友人をガイド役に、深夜のフィレンツェというレアな光景を見て回る事が出来ました♬









クライアントチームとはここでお別れ。翌日は朝から一人でウフィツィ美術館へ。実は初めてのフィレンツェ滞在、個人的にもう一つ目的がありました。それはこの美術館に展示されている、レオナルドの描いた2枚の天使像を見ること。1枚は作品1472~3年に描かれた『受胎告知』、もう1枚は同時期に描かれた彼の師ヴェロッキオ作『キリストの洗礼』です。『受胎告知』はレオナルドの初期の代表作として、『キリストの洗礼』はヴェロッキオの元で複数の職人により描かれた作品ですが、天使を担当したレオナルドの才能がヴェロッキオに筆を折らせたという伝説で、共に広く知られる作品です。この逸話は美術史家ヴァザーリの創作とされていますが、確かに様々な人の手が重なり混じるこの絵画の中で、横顔の天使だけが明らかに異質な存在感を放っているのが強く感じられます。実はそれ以外にも青い衣やキリストの身体の一部など、レオナルド特有の雰囲気というか、ただならぬ感覚が見え隠れする部分がいくつか...。
天使だけをレオナルドが描いたとも、全体の仕上げに手を加えたとも言われていますから真相は定かではありません。あまり科学的にすべてを明らかにするよりも、謎のまま、想像に任せて鑑賞する方が楽しいような気がいたします(^u^)



そして嬉しい偶然がもう一つ。その日の午後、街を散策していましたら、ミケランジェロギャラリーで何と『Macchine di Leanardo』が!これはレオナルドの発明した機械の模型が見られる展覧会なのですが、数年前に訪れたヴェネツィアで偶然目にし、夢中になった記憶があります。今回も前情報なしに辿り着けてしまうとは...よほど人気の展覧会でイタリア中を巡回しているのか、それとも素敵な偶然が2度も訪れたのでしょうか♬ 




左はヴェネツィア展のカタログ、右は今回のフライヤー。次はどこの都市で見られるかしら....?




散策を終えた帰り道、スカラ通りにあるサンタマリアノヴェッラ薬局へ。通りを進むにつれ漂ってくる香りで、お店の入口に気付きます。









ドメニコ修道士達の薬局として名高いこのお店、14世紀に建てられた教会の一部を残しつつ改修工事を重ね、現在では石鹸やクリーム、香水などを販売する傍らでミュージアムギャラリーとしても楽しめるようになっています。トマス・ハリスの小説『ハンニバル』に描写されている二重扉やアールデコ・ランプの仄かな灯り、そして室内に籠る優雅で複雑な香....  まさにハリスの "この世で最も香しい場所の一つ" という表現が相応しい空間です♪





1700年代に出版された薬草図鑑。調合器具や、保存用の陶器なども展示してあり、ゆっくりと時間をかけて楽しめました*














  

2013-04-24

Ciao, italian art* その2 ~ Arezzo ~


(The summary of text is coming soon * )


今日は現地の会社&工房の視察です。まずは会社のデザイン室を訪問。見せてもらった細かな透かし彫りのジュエリーは、実は3Dグラフィックによるもの。よく日本で目にする3D造型機とは全く異なるクオリティに驚かされました。デザイナーさん達もとても気さくで、「これは鋳造の作り方、こっちは3D」と沢山サンプルを出しつつ、それぞれのメリットを説明してくれました。工房訪問のため会社を出る時間ギリギリまでお話して頂けて嬉しかったです(>u<)* Grazie!!





次は工房へ。高い天井の一室には様々な機械と作業机、職人さん達は黙々とネックレスを組み立てています。邪魔しないようにそ〜っと背後から観察...と思いきや、作り方を見せてあげようとばかりに作業中の一束を溶液へどぶん。(*o*;;)しばらくかき混ぜた後、流水で洗い落とすと....2色に分かれた幅広のネックレスが現れました♬ 触らせてもらうと見た目を裏切る軽やかさ、そして色同士の境界はきれいなラインを描いています。お見事!

そして何と、この工房の中核へも入室許可が!!(笑) ホールガーメントを編むような設えのこの機械で極細の金を編んでいるのですが、その細い絹糸のような金線を手に取りよくよく目を凝らすと....細かいカットが入っているではありませんか。。。。。もはや絶句するしかありません。









更にこの後訪れた別の工場では、最新のレーザーカットマシンのデモンストレーションを見学。ほとんどファンタジー映画の世界のごとく鮮やかなネオングリーンの光がくるくると動き、金属板を焼いて繊細なレース模様が切り抜かれてゆく様子を見つめながら、ふと、この前日本で目にしたフェンディの縫製を思い出し、フランスとイタリアの"モノづくり"のプロセスはこんなにも違うのだなと何となく、腑に落ちた気がしておりました。

その時々の世の中の空気感、哲学や個人のインスピレイションを表現するためにテクニックを駆使し、世界観をエモーショナルに表現するのがフレンチモードであるなら、イタリアのファッションやジュエリーは、途方も無い工程と時間を費やしても、職人の技術を極めることで新しい美を生み出そうとするアルチザン・マインドが出発点になっているのだと。だからこそ出来上がった"モノ"には、時に保守的と言われても揺るがない、成熟した美しさが備わっているのでしょう。

沢山の驚きと宿題を頂いて、充実の現場視察でした* 





おまけスナップ。工房の隅に放り込まれていた切れ端の山です。再び溶かされてまた素材になるのでしょうか。近づいてみると...魅惑の輝きです♬




2013-04-23

Ciao, italian art* その1 ~ Arezzo ~






Arrived to Florence via Amsterdam!  I've stayed Florence for business trip all this week. In the mid-night airport, the contemporary art greeted me.

クライアントのイタリア出張に飛び入り参加し、アムステルダム経由でフィレンツェへ。ジュエリーの街アレッツォへ行ってまいりました*
深夜のペレトラ空港では、現代アートがお出迎え♬
街全体が美術館とも言われるフィレンツェ、ゆっくり市内を見て回りたいところですが、ベースホテルに荷物を置いたら明日は列車で合流先のアレッツォへと向かいます。





Next day, arrived in Arezzo aboard the local line from Santa Maria Novella station. In front of the station, I saw a tremendous statue of bronze, fictitious creature  "Chimera". 
It's called "Chimera of Arezzo", a masterpiece of Etruscan art, was discovered in Arezzo in the 16th century, then it has become the collections of the National Archaeological Museum of Florence. this bronze is a replica, but still keeping a variant beauty & power! !


サンタマリアノヴェッラ駅からローカル線に乗り、アレッツオに到着です。駅前の噴水に鎮座する像は、ライオンをベースに山羊と蛇が融合したいわゆる"キマイラ"。エトルリア美術の傑作で16世紀にこの地で発見されたため『アレッツオのキマイラ』と呼ばれていますが、本物はフィレンツェの国立考古学博物館の収蔵品となっており、こちらはレプリカ。複製でもこの迫力はさすがです (*o*)


エトルリア・ローマ文明の時代から金細工の技術に長けていたアレッツオは、現在も郊外に宝飾工場が建ち並ぶ、ジュエリー工業地帯であるという一方で、駅近くの旧市街には『ライフ・イズ・ビューティフル』をはじめ多くの映画の撮影地でも知られる文化遺産がたくさん。待ち合わせまで時間がありましたので、旧市街を散策してみました。


   

丘の上の教会に向かって伸びる細い路地の両脇に並ぶ家々を眺めながらのんびり歩くと、突然目の前に巨大な塔や城壁、由緒ある教会が現れます。小さな街のあちこちに宗教的な影を強く残したまま、時間が止まっているような場所が点在する街は、例えばブルゴーニュの小さな村々に流れる牧歌的な空気とはまた違う、ひっそりと堆積した気配を感じるような、不思議な印象です。



The goldsmith industry of Arezzo has began from the Etruscan and Roman era, they are inheriting the high technology of their ancestors, having a many jewelry and goldsmith factories on the outskirts of the city even today. In addition, 
there are some cultural heritage that was the scene of "Life Is Beautiful" in the old town.

walking leisurely while looking at houses lined on both sides, I enjoyed that the old walls and towers, huge church venerable appears in front all of a sudden. 


その後はホテルでクライアント達と合流し、明日以降のスケジュールをざっと確認。ジュエリーの工場を視察するという今回の目的、イタリアンジュエリーの"今"を目にする事が出来る貴重な機会ですから、ワクワク仕事モードのスイッチが既に入っておりましたが、折角アレッツオに来たのだからと、先にフィレンツェ入りされていた専務の計らいで市庁舎のあるリベルタ広場からグランデ広場まで、車で名所巡りをして頂きました!





Twilight time.... the clock tower's shadow had getting deeply beautiful.


リベルタ広場に着く頃には陽も落ちかけ、深くなる陰影が美しい時計塔。
20世紀に大規模な修復が行われたこの塔の特徴的な屋根飾りは、皇帝派である事を表す"ギベリン"という中世の様式。西洋史の授業で何となく聞き流していたローマ教皇と皇帝の争いが街のシンボルとなる建築にどんな影響を及ぼしたのか、実際目にすることが出来るとは....ただただ感嘆するばかり。


そしてイタリアで最も美しい広場の一つとされているグランデ広場へ。
急勾配の広場を囲むように建てられた教会や裁判所、宮殿はすべて13世紀から18世紀に建設されたものがそのまま残されているというからこれもまた驚きです。

支配者の違う時代に建造された建物が破壊されず現存しているのはそれらの持つ堅固さと荘厳さ故でしょうか。一つ一つご紹介してゆきたい所ですが、観光リポートみたいになってしまいそうですので(笑) 初日はこの辺りで...*  
幻想的なひと時を体験させてくださった専務に感謝です♬






     














2013-04-21

アトリエにて。



桜も終わり、そろそろ新緑の季節に...と思いきや、週末は冬に逆戻りしたかのような寒さでしたね。個展が終わりあっという間に1ヶ月、おかげ様にてアトリエは忙しくさせて頂いております(^_^;)




先日、個展を見て下さったお客様からダイヤモンドのクチュールリングをオーダー頂き、クラシックな立て爪のエンゲージリングからダイヤを外してチェックしている所です。後で伺ってびっくりしたのですが、何とこの指輪、祖父がお納めしたものだったとか。
宝石商ハリー・ウィンストンがとあるインタビューで、なぜダイヤモンドにこだわるのかと尋ねられ「ダイヤモンドは、納めた人の子供や孫の手に渡って、必ず戻ってくる。そしてまた我々はそのダイヤモンドを新しいジュエリーに仕立て、お返しする。それが繰り返されるんだ、まるでブーメランのようにね。素晴らしいダイヤモンドとはそういうものだ」と答えたそうです。"キング・オブ・ダイヤモンド"と称されるこのジュエラーの言葉を引用するにはささやかな出来事でしたが、ダイヤモンドがオーナー様だけでなく、作り手にとっても世代を超えて手にする宝石となった事に、何やら感慨深いものを感じてしまいました*






こちらは以前にお作りしたクチュール・ジュエリーのメンテナンスが上がった所です。大切にお使い頂いていても、何年か経つと小さな傷が表面に付いたり、皮脂や細かい繊維なども裏側に入り込んで、曇ったように見えて来てしまいます。石のダメージをチェックしてから洗浄をかけ、磨き上げて新品のように。一目でわかる程美しくなったジュエリー達、早くお手元にお返しさせて頂きたいです♪喜んで頂けますように....♬







2013-04-06

UN ART AUTRE





工房での打ち合わせの後、東京藝術大学美術館で開催されていたFENDIの巡回展へ。閉館30分前のすべり込み入館だったせいか、混雑もなくゴージャスなファーの世界を堪能できました♬

" UN ART AUTRE - Another Kind of Art, Creation and Innovation in Craftsmanship  "と題されていたこの美術展の副題、日本語では「もうひとつのアート、クリエイションとイノベーションの軌跡」と訳されていましたが、見終わってからは、本物の創造力と革新力はクラフツマンシップの中にこそ宿るのだなと原題の持つ意味の深さを感じずにはいられませんでした。

人の思考がより効率的に、コストを抑えて無駄を省いて...という時代性とは対極に位置する手仕事の、息をのむような精密さと美しさ。特に今回初めて知った" V let-out "という技法には衝撃を受けました。「大切なのは、贅沢に素材を使う事を恐れないこと」とイタリアから来日していた職人さんの言葉
がとても心に響き、私まで何だか背筋が伸びた気分でした。

例えばランバンのバイアス使いやピンチング技法にも通じる所がありますが、ファッションにおける革新性とは見た目の奇抜さだけでなく、着用した時にその"贅沢な技術"の意味を体が理解する瞬間が驚きとなって訪れることが一つの重要なファクターなのかも知れません。新たな美しさのために素材や時間を惜しまず費やせる、メゾンの情熱と忍耐力(もちろん経済的な意味も含め)に裏打ちされた迫力のアーカイブ作品の数々がゴールドの展示ケースに陳列されている様は、それは圧巻でした♫

また細かく裁断されたフォックス、ミンク、一枚皮のチンチラなど様々なファー素材を間近で見たり触れたり出来る貴重な体験もあり(*w*) たっぷり楽しめたこの美術展、会期中にもう一度行きたいくらいです。





鑑賞後に上野公園で見かけたアート作品が、"インレイ" 技法にしか見えませんでした....(笑)




『FENDI — UN ART AUTRE』 
Another Kind of Art, Creation and Innovation in Craftsmanship』4月3日(水) 〜 4月29日(月)
東京藝術大学大学美術館 展示室3・4